小学生が九九を覚えられないときは、暗唱量を増やす前に「どの段で止まるのか」「式の意味が見えているか」「家で緊張していないか」を分けて見ます。結論は、全部の段を一気に言わせるより、1段だけを短く戻し、表・絵・生活場面を使って「何個分か」を確認し、できた段を少しずつ増やすほうが親子とも続けやすいということです。
九九を覚えられないときは、まず分けて戻す
九九でつまずくと、家庭では「何度も唱えれば覚えるはず」と考えがちです。もちろん声に出す練習は大切ですが、子どもによって止まっている場所は違います。音の並びが覚えにくい子もいれば、式の意味があいまいな子もいます。6の段や7の段だけが混ざる子、テストになると頭が真っ白になる子、家では言えるのに学校では言えない子もいます。
最初に避けたいのは、九九を「努力不足」だけで片づけることです。九九は短い言葉の暗記に見えますが、実際には、順番を覚える力、数のまとまりを見る力、言葉をリズムで出す力、間違えたときに立て直す力が重なっています。どれか一つが弱いだけで、家庭学習の時間が長くなり、子どもは「また怒られる」と感じやすくなります。
家庭での戻し方は、次の順番が現実的です。まず、1から9の段を全部言わせず、どの段のどの場所で止まるかを見ます。次に、止まった式を「何の何個分か」と絵や物で確認します。そのうえで、1回5分以内の短い練習を毎日同じ時間に置きます。できたら印をつけ、できなかった式は翌日に残します。これだけでも、親の声かけは「どうして覚えないの」から「今日はここだけ見よう」に変わります。
九九は、早く言えることだけが目的ではありません。かけ算の意味を使って、文章題、わり算、面積、割合の学習につながっていきます。暗唱が苦手な子でも、意味がわかっていれば戻す道があります。反対に、暗唱だけで通ってきた子も、後の単元で意味理解が必要になります。だからこそ、家庭では「言えるか」と「わかっているか」を同時に見すぎず、分けて支えることが大切です。
保護者が最初に知っておきたいのは、九九の苦手は一枚岩ではないということです。たとえば、2の段、5の段、9の段は言えるのに、6の段から急に止まる子は、かけ算そのものをまったく理解していないとは限りません。順番の音が混ざっているだけかもしれません。一方で、全部をリズムで言えるのに、文章題になると使えない子は、暗唱より意味の確認が必要です。同じ「覚えられない」という言葉の中に、違う困りごとが入っています。
家庭では、最初の目標を「全部すらすら言える」にしないほうが進めやすくなります。最初の目標は「止まる場所を親子で知る」、次の目標は「1段だけ安心して練習できる」、その次に「表を見れば戻れる」、最後に「表なしで少しずつ言える」と分けます。目標を小さくすると、子どもは毎回失敗を数えられる時間から離れられます。保護者も、今日の練習が成功したかどうかを、満点ではなく前日との差で見られるようになります。
九九で止まる理由は「音」「意味」「気持ち」に分かれる
九九を覚えられない理由は、一つに決めつけないほうが見立てやすくなります。よくあるのは、音として覚えることが苦手なケースです。「しちしちしじゅうく」「はっぱろくじゅうし」など、似た音や言いにくい音が続く段で止まりやすくなります。この場合、紙に書かせるより、短いリズム、手拍子、親子で交互に読む方法が合うことがあります。
二つ目は、かけ算の意味が薄いケースです。2×3を「2が3つ」と見られず、ただの言葉の列として覚えていると、順番がずれたときに戻れません。たとえば「6×7」が出てこないとき、6個入りの袋が7袋、7個入りの皿が6皿、という場面に置き換えると、式がただの暗号ではなくなります。意味を確認する日は、速さを求めず、絵やブロックで数を作るだけでも十分です。
三つ目は、気持ちの負担です。九九は学校でも家庭でも確認されやすいため、できないことが続くと「自分だけできない」と感じやすくなります。親が焦って毎回テスト形式にすると、子どもは答えを思い出す前に身構えます。間違いを指摘される時間が長いほど、練習そのものを嫌がることもあります。家で見るべきなのは、答えの正誤だけでなく、表情、声の大きさ、始めるまでの時間です。
四つ目は、練習量ではなく練習の範囲が広すぎるケースです。1日で全部の段を復習すると、できる段もできない段も混ざり、子どもは達成感を持ちにくくなります。特に6、7、8の段が混ざっている子に、毎日1から9の段を順番に言わせると、疲れたころに苦手な段へ入るため失敗経験が増えます。苦手段は、元気な時間に1段だけ扱うほうが続きやすいです。
五つ目は、学習環境の問題です。テレビの音、きょうだいの声、夜遅い時間、急いでいる朝など、集中しにくい条件では覚えたことを出しにくくなります。九九が苦手な子ほど、短く静かな時間が必要です。家庭の中で「ここなら少し落ち着ける」という場所を決め、練習道具を一つの箱にまとめておくと、始める前の負担が下がります。
きょうだいや友だちとの比較も、つまずきを大きく見せる要因になります。上の子はすぐ覚えた、同じクラスの子はもう合格した、という情報は保護者の焦りを強めます。しかし、家庭で必要なのは比較ではなく、目の前の子どもがどの条件なら答えを出せるかを見ることです。表を見れば言える、親と一緒なら言える、朝なら言える、1段だけなら言える。こうした「できる条件」を集めると、次に外す支えが見えてきます。
また、九九の苦手が急に出たように見える場合は、算数以外の疲れも確認します。学校行事が続いている、睡眠が短い、宿題全体が増えている、習い事で帰宅が遅いなど、生活の負荷が高い時期は、覚えていたことも出にくくなります。九九だけを切り出して叱る前に、いつなら少し落ち着いて取り組めるかを探します。練習の質は、子どものコンディションに大きく左右されます。
やり直す前に、家庭の条件を整える
九九のやり直しで最初に決めるのは、練習時間の短さです。おすすめは、1回3分から5分です。短すぎるように感じるかもしれませんが、九九で傷ついている子には「すぐ終わる」「今日はここだけ」という見通しが必要です。長く座らせるより、毎日同じ時間に短く触れるほうが、親子の抵抗感を下げやすくなります。
次に、九九表を隠しすぎないことです。暗唱テストでは見ない場面もありますが、家庭練習の初期は、表を見ながらでかまいません。表を見ることを「ずるい」と扱うと、子どもはわからない式を推測で答えるだけになります。表で位置を確認し、声に出し、最後に表を伏せるという順番なら、安心して練習できます。
声かけは、正解を褒めるより、戻り方を褒めます。「今、表を見て確かめられたね」「6の段だけ最後まで言えたね」「間違えたあとにもう一回言えたね」という言葉は、子どもが自分の立て直し方を覚える助けになります。反対に「何回やったら覚えるの」「みんなできているよ」は、次の練習を重くします。
学校への共有も、早めに考えてよいことです。九九は授業や宿題とつながるため、家庭だけで抱えると親子とも疲れます。連絡帳や面談では「7の段の6以降で止まりやすい」「家では表を見れば言える」「テスト形式だと固まる」など、具体的に伝えると相談しやすくなります。先生に丸投げするのではなく、家庭で観察した事実を共有する姿勢が大切です。
練習道具は多くなくて構いません。九九表、白い紙、鉛筆、数を置ける小物があれば十分です。アプリや教材を使う場合も、最初から長時間使わせるのではなく、子どもが自分で止められる範囲にします。音が出る教材は楽しく続く子もいますが、刺激が強くて疲れる子もいます。家庭の目的は、教材を使い切ることではなく、子どもが安心して戻れることです。
練習を始める前には、保護者の役割も決めておくと安定します。親が先生役になりすぎると、間違いを直す言葉が強くなりやすいものです。家庭では「問題を出す人」「一緒に読む人」「できた場所を記録する人」のどれを担当するかを決めるだけでも、空気が変わります。特に親子げんかが続いている場合は、保護者は問題を出さず、子どもが自分で表を見て読み、親は最後に一つだけ丸をつける方法から始めてもよいです。
記録用紙は、点数表にしないことをおすすめします。点数や正解数だけを並べると、できなかった日が目立ちます。代わりに「今日見た段」「表を見れば言えた式」「明日もう一度見る式」を書きます。できない式を責めるためではなく、次の日に迷わず始めるためのメモです。子どもが書くのを嫌がる場合は、保護者が短く書いておくだけで十分です。
- 練習は1回3分から5分にする
- 最初は九九表を見てもよい時間にする
- 苦手段は元気な時間に1段だけ扱う
- 間違いの数より、止まった場所を記録する
- 家で見えた様子は学校へ具体的に共有する
練習方法は、子どもの止まり方で選ぶ
九九の練習方法には、それぞれ向き不向きがあります。どれか一つを正解にせず、子どもの止まり方に合わせて選ぶと、家庭での衝突が減ります。以下の表は、家庭で使いやすい方法を比べたものです。最初の1週間は、二つ以上を詰め込まず、主な方法を一つ決めるほうが進めやすいです。
| 方法 | 向いている子 | 家庭での使い方 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 声に出して唱える | リズムで覚えると入りやすい子 | 親子で交互に読み、1段だけを短く繰り返す | 全部の段を毎回言わせると疲れやすい |
| 九九表を見る | 位置や並びで安心できる子 | 表を指で追い、最後に一部だけ隠す | 見ながら正解した後に、意味も一度確認する |
| 絵や物で数える | 式の意味があいまいな子 | 皿、袋、ブロックで「何個分」を作る | 時間がかかるので、速さを求めない日に使う |
| カードで答える | 短い確認なら集中できる子 | 苦手な式を5枚だけにし、できたら減らす | 枚数を増やしすぎるとテスト感が強くなる |
| 生活の中で使う | 机の練習を嫌がる子 | 3個入りのお菓子が4袋など、買い物や配膳で使う | 無理に問題化せず、会話の中で軽く扱う |
音で覚える方法が合う子は、親が先に言い、子どもが後半だけ言う形から始めます。「ろくいちが」「ろく」「ろくに」「じゅうに」のように、言う部分を少なくすると参加しやすくなります。慣れてきたら、親が奇数番、子どもが偶数番を読むなど、ゲームに近い形にします。
意味を確認する方法が合う子は、式を絵にします。6×4なら、6個の丸を4列に並べても、4個の丸を6列に並べてもかまいません。ここで大事なのは、式と答えを丸暗記から切り離し、「同じ数のまとまりがいくつあるか」を見ることです。毎日すべての式を絵にする必要はなく、止まった式だけで十分です。
カード練習は便利ですが、枚数を増やすと失敗の量も増えます。家庭では、できないカードを集めるより、できるカードを外していくほうが前向きです。5枚から始め、3枚できたら終了でも構いません。「全部正解するまで終わらない」より、「今日はここまでできた」と終われる形にします。
方法を選ぶときは、子どもが嫌がらない方法から始めます。最も効果がありそうな方法でも、始める前から強く拒否するなら続きません。たとえば、書く練習が嫌いな子に何十回も書かせるより、親子で交互読みをしてから、最後に苦手な式を一つだけ書くほうが現実的です。机の練習に抵抗が強い日は、食卓で皿を並べる、鉛筆を束にする、洗濯ばさみを数えるなど、生活場面を使います。
反対に、ゲーム感覚が強すぎると興奮して答えを急ぎ、間違いが増える子もいます。その場合は、時間を競うより、ゆっくり声に出す練習が向いています。速さを測るのは、子どもが答えに安心してからで十分です。九九が苦手な時期は、速く答えることより、間違えたときに表や意味へ戻れることを優先しましょう。
7日間で親子げんかを減らしながら戻す手順
ここでは、家庭で試しやすい7日間の戻し方を紹介します。目的は、7日で完璧にすることではありません。親子げんかを減らし、子どもが「もう一回ならできそう」と感じる状態を作ることです。学校の進度や宿題がある場合は、先生の指示を優先しながら、家庭では短く補助する形にしてください。
- 1日目:止まる段を調べる。 1から9の段を全部テストするのではなく、子どもが言いやすい段から始めます。途中で止まったら答えを責めず、段と式だけをメモします。最後に「今日は調べる日」と伝えて終わります。
- 2日目:1段だけを表で確認する。 一番苦手な段ではなく、少し戻せばできそうな段を選びます。九九表を見ながら指で追い、親子で一緒に読みます。表を見てよい時間にすると、子どもの緊張が下がります。
- 3日目:止まる式を物で作る。 6×4や7×8など、言葉だけで出ない式を丸、積み木、消しゴムで作ります。答えを急がず、「同じ数がいくつあるか」を見ます。式の意味が見えたら、その日の練習は短く終えます。
- 4日目:前から、後ろから、飛ばして言う。 順番だけで覚えている子は、途中から聞かれると止まりやすいです。選んだ段を前から言った後、後ろから、または3番目から言ってみます。できない場所は表に戻ります。
- 5日目:生活場面で一つだけ使う。 お菓子、箸、プリント、鉛筆などを使い、「4本入りが3つなら何本かな」と軽く聞きます。机での練習にしない日を入れると、九九が生活の中の考え方として見えやすくなります。
- 6日目:5枚だけカードで確認する。 苦手な式を5枚だけカードにします。正解したら別の山へ移し、間違えたら表を見て確認します。5枚全部を何周もするより、1周して終わるほうが続きます。
- 7日目:できたことを残し、次の段を一つ決める。 できるようになった式、まだ不安な式、学校へ相談したいことを分けます。次に扱う段を一つだけ決め、同じ流れを続けます。
この7日間で大事なのは、毎日同じ量をやらせることではありません。疲れている日は、表を見て1回読むだけでもよい日があります。子どもが「今日はできなかった」と感じたときほど、親は「どこで止まるかわかった」と言い換えます。練習を終える言葉が次の日の入り口になります。
記録は細かくなくて構いません。紙に、日付、扱った段、できた式、次に見る式を書きます。点数や回数より、止まる場所が見えることが目的です。記録があると、学校へ相談するときにも「家ではこの式で止まりやすい」と伝えやすくなります。
7日間の途中でうまくいかない日があっても、最初からやり直す必要はありません。疲れていた日、眠かった日、宿題が多かった日は、記録に「今日は読むだけ」と残して終えてよいです。大切なのは、練習が途切れたことを責めないことです。翌日に同じ段へ戻れば、流れは続いています。
7日後に確認するのは、全問正解かどうかだけではありません。始めるまでの時間が短くなったか、表を見れば自分で直せるか、苦手な式を言葉にできるか、練習後の親子の空気が少し軽くなったかも見ます。九九は学習内容であると同時に、家庭での向き合い方が出やすい単元です。正解数だけでなく、続け方の変化も成果として扱いましょう。
様子別に、声かけと練習量を変える
6、7、8の段だけが混ざる子は、まず段をしぼります。似た答えや言いにくい音が増えるため、ここで止まるのは珍しいことではありません。7の段が苦手なら、1日目から7の段だけを扱います。6の段、7の段、8の段を同じ日に比べると混ざりやすくなるため、しばらくは別の日にします。
順番なら言えるのに、ランダムに聞くと止まる子は、暗唱の列に頼っている可能性があります。この場合、いきなりランダム問題を増やすより、途中から言う練習を入れます。「7×4から言ってみよう」「7×6だけ表で見よう」のように、列を切り出します。途中から言えるようになると、文章題でも使いやすくなります。
テストになると固まる子は、家庭でテスト形式を増やしすぎないことが大切です。タイマー、点数、親の視線が強いと、答えより不安が前に出ます。家では「表を見てよい確認」「一緒に読む確認」「最後に1問だけ表を伏せる確認」の順番にします。学校での確認が不安なら、担任の先生に家庭での様子を共有し、どのような形で確認されているか聞いてみましょう。
親子げんかになりやすい家庭では、親が教える役を少し減らします。たとえば、子どもが自分で表を指す、親は丸をつけるだけ、答え合わせは翌朝にする、など役割を変えます。親が毎回正解を求める人になると、子どもは始める前から構えます。家庭の練習は、完璧な授業ではなく、学校の学びを落ち着いて支える時間です。
書けば覚えると言われても、何度も書くことを嫌がる子もいます。書く練習は、手を動かすことで覚えやすい子には合いますが、苦手な子には負担が大きいことがあります。書くなら、苦手な式を1つだけ、式、答え、絵の順に書く程度にします。何十回も同じ式を書かせるより、意味を確認して声に出すほうが合う子もいます。
チェックリストとして、次の項目を見てください。3つ以上当てはまる場合は、家庭の努力不足ではなく、練習の形を変える合図と考えます。
- 特定の段だけで止まりやすい
- 表を見れば言えるが、表を隠すと固まる
- 順番なら言えるが、途中から聞くと答えにくい
- 答えを間違えるより、始める前の不安が強い
- 練習が長くなるほど涙や怒りが出やすい
- 学校の宿題や確認の形が家庭でわからない
学校へ相談する目安は、九九そのものが一時的に苦手なだけでなく、算数全体への拒否感が強くなっているときです。宿題を前に泣く、登校前に不安を訴える、かけ算以外の計算でも急に手が止まる、家庭で毎回大きな衝突になる場合は、担任の先生や学校の相談先に早めに状況を伝えましょう。
相談するときは、家庭での練習量を増やすお願いだけでなく、学校での様子を聞くことも大切です。授業中に手を挙げているか、友だちの前で確認されることを嫌がっていないか、宿題の量が今の子どもに合っているか、先生から見てどの段で止まっているかを確認します。家庭と学校で見えている姿が違うこともあります。
また、九九だけでなく、数をまとまりで見ること、文章を読んで式にすること、位取りをそろえて書くことにも困りがある場合は、算数のつまずき全体として見直します。九九を単独で責めるより、どの力が支えになれば次の単元へ進みやすいかを考えます。必要なら、学校の補習、家庭での短い復習、同じ小学生向けの記事での確認を組み合わせ、無理のない形にします。
九九のつまずきでよくある質問
Q. 九九は何年生までに完璧に覚えないといけませんか?
A. 学校の算数では、かけ算や九九は小学校低学年で段階的に扱われますが、家庭で見るときは「完璧」という言葉を急ぎすぎないほうがよいです。
授業や宿題の進度は学校によって違います。家庭では、学校で今どこを扱っているかを確認しながら、止まる段を少しずつ戻します。九九は後の学習でも使うため、放置はしないほうがよいですが、できない日があるだけで将来を決めつける必要はありません。
学校で確認が続いている時期は、家庭でも焦りやすくなります。その場合は、先生から出ている宿題を優先し、追加でやる家庭練習は短くします。宿題と別に長い暗唱練習を重ねると、子どもにとって九九が一日の大半を占めるように感じられます。家庭の補助は、学校の学習を支える量にとどめます。
Q. 九九表を見せると、いつまでも覚えないのでは?
A. 最初から隠すより、表を見て安心して確認し、少しずつ隠すほうが合う子もいます。
表は、答えを写すためだけのものではなく、数の並びや段の関係を確認する道具です。表を見て言えるようになったら、1列だけ隠す、答えの一部だけ隠す、苦手な式だけ表に戻る、という順番にします。表を見る段階を責めないことが大切です。
表を使うときは、ただ答えを読むだけでなく、指でたどる、同じ答えを探す、5の段や10のまとまりに近づけて見るなど、関係に気づける声かけもできます。ただし、説明を増やしすぎると負担になります。1回の練習で扱う気づきは一つだけにし、子どもが「なるほど」と言えなくても、表に戻れるだけで前進と考えます。
Q. 毎日どれくらい練習すればいいですか?
A. 家庭では、1回3分から5分の短い練習を続けるほうが現実的です。
長く練習すると、その場では量をこなしたように見えますが、苦手意識が強い子には負担が残ります。1段だけ、5枚だけ、1問だけなど、終わりが見える形にしましょう。学校の宿題量が多い日は、追加練習を減らしても構いません。
毎日できない家庭もあります。その場合は、週に3回でも、同じ時間帯に短く置くことを目標にします。続かなかった日を埋め合わせるために翌日20分やるより、翌日も5分で終えるほうが、子どもは再開しやすくなります。九九は一度の長時間練習より、思い出す回数を少しずつ増やすほうが家庭では扱いやすいです。
Q. 家で教えても改善しないときは、どう相談すればいいですか?
A. 「九九ができません」だけでなく、止まる段、表を見たときの様子、テスト形式への反応を具体的に伝えると相談しやすくなります。
連絡帳や面談では、「7の段の後半で止まりやすい」「表を見れば答えられる」「ランダムに聞くと固まる」「家庭練習で泣くことが増えた」など、観察した事実を共有します。必要に応じて、授業中の様子、宿題の出し方、確認テストの形式を聞いてみましょう。
相談は、困りごとが大きくなってからでなくても構いません。短いメモで「家ではこのように戻しています」と伝えるだけでも、学校側が様子を見やすくなります。家庭で無理にすべてを解決しようとせず、学校での学びと家での安心感をつなげることを目指しましょう。
まとめ:九九は短く戻し、同じ小学生の悩みへつなげる
小学生が九九を覚えられないときは、暗唱の回数だけを増やすより、止まる理由を分けることから始めます。音として入りにくいのか、かけ算の意味が見えていないのか、テスト不安が強いのかで、家庭の支え方は変わります。1回3分から5分、1段だけ、表を見てもよい時間から始めると、親子げんかを減らしながら戻しやすくなります。
今日できる一歩は、全部の段を確認することではなく、止まる段を一つだけ見つけることです。見つけたら、表で確認し、物で作り、短く声に出します。できた式に印をつけ、できない式は翌日に残します。子どもが「まだできない」と感じているときほど、家庭では「どこを戻せばよいか見えてきた」と言葉を変えてください。
九九以外にも算数の苦手が広がっている場合は、算数が苦手な小学生へのつまずき対策で全体像を確認できます。計算の見直しで困っているなら、計算ミスが多い小学生への声かけと練習手順が近い内容です。家庭学習の時間や習慣が整わない場合は、家で勉強しない小学生の習慣づくりを読み、教材選びで迷う段階なら、小学生の通信教育が合う家庭・合わない家庭で条件を整理してください。
九九で止まった時期は、子どもにとって「算数が苦手」と感じ始める分かれ道になることがあります。だからこそ、家庭ではできない式を追い詰めるより、戻る方法を一緒に見つけることを優先します。表を見てもよい、物で作ってもよい、1段だけでもよいという経験は、次の単元でつまずいたときにも役立ちます。完璧に覚えさせる前に、困ったときに戻れる子にする。その視点があると、家庭の声かけは少しやわらかくなります。
参考にした公的情報
この記事では、2026年6月30日時点で、文部科学省の平成29・30・31年改訂学習指導要領(本文、解説)、文部科学省の小学校学習指導要領解説、文部科学省の小学校学習指導要領解説 算数編を確認しました。かけ算や九九の扱いは学校の授業進度に沿って確認し、この記事では特定の教材、点数、学習時間を一律の正解として示していません。